音楽とか 林檎とか

musics,novels and more

本能〜椎名林檎 罪

椎名林檎は終わった、などとは思っていなかったよ。

ただ、見てしまったんだ。

拡声器を投げ捨てるかわりに、やさしく床に置くあなたを。

 

カメラのレンズにぶち当ててほしかったわけじゃない。

ずっと口につけていてほしかったわけでもない。

かといって、ナース服を破いて、歌わずに大股で去ってほしかったのでもない。

 

なにかが違う。

 

あなた自身に先がけて、おれはあなたから遠ざかった。

「勝訴」も「精液」も、ちゃんと聴かなかった。

 

つまり、おれが見たかったのは、敵意と軽蔑で光る瞳。

それは、ないものねだり。

必死のひとつのいのちを目の前にしても、なお。

 

https://www.youtube.com/watch?v=IPReYQkPkRY

 

f:id:repurcussions4life:20170626120928j:image

 

おれのようなリスナーは、あなたのファンとはいえなかった。

あなたの音楽を聴く必要はあっても、その資格はなかった。

 

年月が経ち。

あなたを見守る幸運が多くの形をなし。

あなたは変わらずひとびとに絵の具をふりかける。

この身に染み込むその色が、かすかにたてる音を感じながら、いつしか自分がゆるされたことに期待している。

もとより、そこにはなにもなかったのかもしれない。

ゆるそうとしなかったのは、自ら。

この先もずっと。