長く短い祭〜林檎 花火
とうわけで、まだ残り半分ある2017年の使い道は決まった。
椎名林檎。
好き放題、彼女の楽曲とMVを味わう。
観ずにいた時間を悔いながら、 2年遅れで "長く短い祭" を体験した。
そう。
たしかにMVがスゴいクオリティだ。
多くのかたの解釈どおり、あれは不倫のはての物語だと思う。
けれど、いちばん重要な場面を指摘した文章はWEB上に探し出せない。
毒を飲み込んで崩れる最期。
修羅場近くでは男のほうから死ぬけれど、女も覚悟している。
不倫の愛の終焉は、みな最初から予期している。
身とこころのどこかで。
そうでしょう? 経験したみなさま。
楽曲そのものについていえば。
サウンドの素晴らしさには、完膚なきまで打ちのめされる。
オートチューンと浮雲は聴くものに"sa_i_ta"を思い起こさせる。
東京事変や彼女の過去を喚起する。
「ひと世の走馬灯」とは一晩の営みであり、スタジオでありライブであり、いままでのすべて。
つまり彼女の、また事変のメンバーの、あるいは彼女に関わったすべてのひとの、かつて生きた様。
そののち「選り取り全方位」に駆けて散る。
別離と邂逅をくり返す「さようならはじめまして」。
彼女は「 思えば遠くへ来たものだ」と打ちあける。
そして、いまや彼女のなかには「行き場がない」ほど創造の泉が湧いている。
そう。
「花火」とは、音楽。
彼女はそれをはっきり見ることができ、聴くことができ、からだ全部で感じることができ、創ることができる才能を授かって、おれたちの前に現れた。
同じ刹那に生きているおれたちは、宇宙の歴史のなかで巡って来たこの幸運を、いまよろこび、楽しみたい。
祭のように。
けれど、覚悟しなければ。
……ほんの仮初めが好いね……
別れは訪れる。
曲が終わるように。
人生のように。
そう。長く短い祭。
感極まる最後のシャウトこそ、おれたちの愛おしい林檎。
椎名林檎 - 長く短い祭 from百鬼夜行 - YouTube