追悼 ありがとう、麻央さん
「笑顔になれることがありますように」
ありがとう。
わたくしごとですが。
学生のとき、麻央さんと同じ三十代で闘病中だった女性を見ました。
脳外科の病棟。
小学生と幼稚園生の子を持つそのひとは、原発巣の乳癌からの脳転移がありました。
自分ごときに湧きあがる絶望感。
けれど、そのひとの闘う姿と、自分に課された使命が鼓舞してくれました。
いのちの縁にいて、なおひとを思いやった麻央さんから、
いままた勇気をもらいました。
ありがとう。
やすらかに。
2017年6月23日
神様、仏様〜林檎 正体見たり
じゅるじゅる、ごっくん。
CDシングルの相方 " 長く短い祭 " を丸ごと喰らって姿を現わすもう一曲。
〜うまいものをくれ〜
〜じゃまをするな〜
〜誰ぞ好い人を呑み込んで、呑み込んで、呑み込んで〜
おお。
正体見たり。
神様?
たしかに林檎は女神だけど。
仏様?
そのままじゃ生きられない身体で生まれたけれど。
化物?
才能のモンスターってのは、そのとおりだけど。
一等恐いのは、自ら。
人間。
彼女の興味はそれ。
たのしくて、気持ちよくて、ウマくて。
つらくて、苦しくて、ニガくて。
塩ツ辛くて、ナマ臭くて、かしましくて。
かなしくて。
あっちで炎上、こっちでフェイク。
狡ツ辛くてキナ臭い、おたがひ様の地球上。
法師がくり返す。
……諸行無常……
神も仏もない電脳時代。
みんなが突き落ちる先は、いずこ。
林檎は地べたに果てずに、どっか消えたなあ。
そう。
両A面のこのシングル。あれもこれも、どっちも本当の林檎。
もう落ち着いたかなあ。
長く短い祭〜林檎 花火
とうわけで、まだ残り半分ある2017年の使い道は決まった。
椎名林檎。
好き放題、彼女の楽曲とMVを味わう。
観ずにいた時間を悔いながら、 2年遅れで "長く短い祭" を体験した。
そう。
たしかにMVがスゴいクオリティだ。
多くのかたの解釈どおり、あれは不倫のはての物語だと思う。
けれど、いちばん重要な場面を指摘した文章はWEB上に探し出せない。
毒を飲み込んで崩れる最期。
修羅場近くでは男のほうから死ぬけれど、女も覚悟している。
不倫の愛の終焉は、みな最初から予期している。
身とこころのどこかで。
そうでしょう? 経験したみなさま。
楽曲そのものについていえば。
サウンドの素晴らしさには、完膚なきまで打ちのめされる。
オートチューンと浮雲は聴くものに"sa_i_ta"を思い起こさせる。
東京事変や彼女の過去を喚起する。
「ひと世の走馬灯」とは一晩の営みであり、スタジオでありライブであり、いままでのすべて。
つまり彼女の、また事変のメンバーの、あるいは彼女に関わったすべてのひとの、かつて生きた様。
そののち「選り取り全方位」に駆けて散る。
別離と邂逅をくり返す「さようならはじめまして」。
彼女は「 思えば遠くへ来たものだ」と打ちあける。
そして、いまや彼女のなかには「行き場がない」ほど創造の泉が湧いている。
そう。
「花火」とは、音楽。
彼女はそれをはっきり見ることができ、聴くことができ、からだ全部で感じることができ、創ることができる才能を授かって、おれたちの前に現れた。
同じ刹那に生きているおれたちは、宇宙の歴史のなかで巡って来たこの幸運を、いまよろこび、楽しみたい。
祭のように。
けれど、覚悟しなければ。
……ほんの仮初めが好いね……
別れは訪れる。
曲が終わるように。
人生のように。
そう。長く短い祭。
感極まる最後のシャウトこそ、おれたちの愛おしい林檎。
椎名林檎 - 長く短い祭 from百鬼夜行 - YouTube
平成風俗〜林檎×ネコさん
通勤中にiPhoneで聴くのは、最近はジャズばっかりだった。
先日、たまたま「平成風俗」の一曲目「ギャンブル」を聴いた。
前から好きな曲だったけれど。
つり革を握りながら、涙が出た。
そこでアルバム通して聴いてみると……。
全曲、泣ける!
「無罪モラトリアム」だけじゃなかったんだ。
「平成風俗」があったんだ。
会社があざと過ぎて、避けるようになった?
うん。
でも、つまみ聴きしてたでしょ?
うん。
気がつかなかったのは、鈍感だったからでしょ?
いや、ちゃんと聴こうとしていなかった。
東京事変がかっこよすぎたから?
そうかもしれない。
唐突に終わらざるを得なかったあのバンドの、最高に洗練された、かがやく絶頂期。
それを知ったあとに聴いたからね。
眼が曇っていた。耳がふさがっていた。
疑心暗鬼になっていた。
おれにとって、「平成風俗」は彼女を代表する作品の筆頭になった。
一枚目のアルバムとともに。
彼女は変化する。
けれど、変わってはいなかった。
身を削って作り上げるという彼女の全ての作品は、もとより彼女自身に他ならない。
https://www.youtube.com/watch?v=Tdj7hU1jDyg